理事長あいさつ

理事長よりごあいさつ

「朝田教育財団だより 第33号 2020年8月」より

朝田教育財団 理事長 水田 雅博

平素から財団の運営に何かとご支援、ご協力を頂き感謝申し上げます。

この度、新型コロナウイルス感染症が急激な勢いで世界中に蔓延し、数多くの尊い生命が失われました。
ここに謹んで哀悼の意を表しますとともに罹患された方々を始め、影響をお受けになられた皆様方に心よりお見舞い申し上げます。

またこの間、新型コロナウイルスに立ち向かい、最前線で日夜ご奮闘を重ねられました医療関係者を始めとする数多くの皆様方に対しまして、敬意と感謝を申し上げる次第でございます。

新型コロナウイルス感染拡大により、我が国では3月から学校園が「休校要請」による休校、4月には「緊急事態宣言」が発出され、全国的に不要不急の外出・往来自粛や感染防止対策としての「密閉・密集・密接」いわゆる「三密」を回避するための行動自粛、施設の使用制限、休止の要請など、私たちの生活は様々な制限により大きく変化いたしました。

京都のまちでは、観光客や外国人の姿を見かけることが無くなりました。
私の勤務する地下街も休業を余儀なくされ、商店街や百貨店と共に京都のまちは賑わいを失い、閑散とした地下街を見た時、これまで経験のない事実に向き合わねばなりませんでした。

そして、テレワ-ク導入による働き方改革、子供たちの教育のオンライン活用、AIの導入、さらにはビッグデータの活用といったテクノロジーの進展が、「コロナ社会」を生きる私たちに対し、「新しい生活様式」を求められることとなりました。

5月末には「緊急事態宣言」も全国的に解除され、徐々に日常が戻りつつありますが、新たな感染者が増加するなど決して気持ちを緩めることが出来ない状況が続いています。

一方で、新型コロナウイルス感染拡大の中で見逃すことが出来ない事実として、感染者やその周辺、医療従事者に対する無理解による誹謗・中傷、差別・偏見が相次ぎました。
それは、新たな時代の人と人の交流の場「SNS」です。
時には「凶器」ともなる手段によって多くの人々が傷つけられました。
あってはならないことであり、心を痛めました。

著名人の感染がメディアに報じられ、新型コロナウイルスに対する危機感を高めたことは事実でありますが、一方でアメリカにおける黒人をはじめ社会的に弱い立場に置かれている人々の罹患率と死亡率が格段に高いことも事実であります。
その人の置かれている社会的立場の位置付けから、差別・被差別の関係を生じさせるという実態も明らかになりました。

新型コロナウイルスの感染拡大によって様々な情報に触れ、「三密」の回避の重要性にも理解を示しながら、政府が呼び掛ける「ソーシャルディスタンス」(社会的距離)の表現に対し、「人と人のつながりは?」と違和感を覚える自分がいました。

また、「コロナ禍」の陰で「リバティおおさか」の愛称で親しまれてきました大阪人権博物館が6月1日をもって閉館されました。
様々な経緯があってのことですが、35年間にわたって果たしてこられた役割の大きさを思うと残念でなりません。
部落問題を中心にあらゆる差別を許さない、人権の保障される社会を目指す歴史資料館として、奈良の水平社博物館と共に日本における人権学習の中核的役割を担ってこられました。
2年後には新しい場所で再出発する準備を進めておられるとのことですので、「リバティおおさか」の新たな門出に期待をしています。

と同時に、朝田善之助記念館も朝田善之助初代理事長が収集された5万点に及ぶ史資料を基本としながら、部落問題解決に向けた人材の育成と人権教育啓発の拠点としてこれからの運営を考えたとき、他人事として看過することは出来ません。
確固たる財政基盤と多くの方々のご理解とご支援を賜りながら運営することが出来ている財団として、与えられた使命と役割を果たしていくことの大切さを痛感しております。

朝田委員長が述べられた財団のモットーである「明日の不幸がわかっているのなら、今日変えようじゃないか」という言葉を胸にこうした困難を乗り越える生き方を目指したいと存じます。

さて、こうした社会状況の中で、朝田教育財団も厳しい新年度のスタートとなりました。
4月当初からの予定は全てキャンセルになりました。研修会や視察の受け入れ等は中止となり、記念館も5月末まで休館しました。
会議の持ち方も大きく変化しました。理事会は何とか開催できていますが、6月の評議員会は感染拡大防止のため書面表決による「みなし決議」の方式をとらざるを得ませんでした。
幸い、評議員の皆様にはご理解を頂き、予定された議案等慎重に審議して頂き、議決を得ることが出来ました。本当に感謝です。

また、財団の大きな事業として、毎年、朝田委員長の誕生日を記念し開催して参りました「朝田善之助記念同和教育研修会」も7月3日に予定していましたが、中止せざるを得ませんでした。

今年度は、京都府議会議員であり当財団の評議員でもある平井斉己さんに講師をお願いしていました。

平井斉己さんは、現実に部落解放運動を担っておられる立場からも部落問題が直面する今日的課題等について具体的なご講演を頂く予定でした。
ご準備も進んでいたようでしたが、誠に残念なでございます。次なる機会には必ず・・・、と考えています。
その節には多くの皆様にご参加頂きますようお願い申し上げます。

財団の主要事業である奨学事業についても、今年度は各大学における新型コロナウイルス感染拡大防止対策等の影響が大きく、今のところ新しい奨学生の応募はありません。
しかしながら、緊急事態宣言も解除され、各大学にも学生の姿が戻りつつありますので、新しい奨学生の確保に向けて募集活動を進めて参ります。
会員の皆さんの推薦等、お待ちしています。

一方で、現役の財団奨学生の皆さんも例外なく、今回の「コロナ禍」により厳しい状況に置かれておられます。
とりわけ学習環境の激変は、思いもよらない事態だったと推測いたします。
財団としても奨学生の皆さんに寄り添った対応をしなければならないと考えています。
財団では、この度の「緊急事態宣言」に関わる国及び京都府の支援措置についても申請いたしました。

そして、財団設立40周年、朝田善之助生誕120周年、全国水平社結成100周年を記念した、2022年に予定している周年事業の計画・立案の中では、奨学生の皆さんへ貸与制をとっている奨学金事業について、財団としてできることは限られていますが、給付制との整合性も検討しながら進めていきたいと考えています。

奨学生の皆さんには、厳しい環境の中にあっても前向きに、この経験を糧に自らどう克服するかを考え、将来に活かして頂きたいのです。

財団では、2020年の周年事業の推進に向けてそれぞれの事業ごとに理事の皆さんを担当者にしてチームを編成し作業にあたっています。
できるだけ早く皆さんにお示しできるよう取り組んでいます。ご理解ください。

厳しいお話ばかりになりましたが、収束の暁には、実施できなかった研修会をより充実した形で行うことや、記念館に来て頂けなかった皆さんに、新しい発信をしていきたいと考えています。
今回の事態を経験する中で、私自身、朝田善之助記念館の果たす役割の重要性を今まで以上に感じています。

今後ともご支援ご協力をよろしくお願いします。

理事長就任のごあいさつ

「朝田教育財団だより 第31号 2019年8月」より

朝田教育財団 理事長 水田 雅博

このたび、松井珍男子大先輩の後を引き継ぎ、朝田教育財団の理事長をお引き受けすることになりました水田雅博です。
よろしくお願いいたします。

昨年の春、「朝田善之助記念館」竣工の新聞記事を見ながら、静かに喜びを噛み締めておりました。
その日から8ヶ月経過した本年1月に松井大先輩から、突然、この度の理事長の話を切り出されました。
これまで、財団が主催される行事や研修会には、時々参加をさせて頂く程度でしたので、驚きと言いますか、よもや私が朝田教育財団の理事長になるなど夢にも思わないことでした。
そして、副理事長の朝田華美さんからもお話を頂き、もうお引き受けするしかないと決意した次第です。
といいますのも、この財団の初代の事務局長として運営の基礎を築かれた朝田善三さんと私は、中学生時代の同級生であり、社会人になってからも様々な連携を図る親友としてずっとお付き合いをした仲だったのです。

善三さんは、御父上の事業を受け継ぐ傍ら、財団設立当初から財団の目的である「部落の青少年などの教育を振興するとともに、部落問題に関する研修、啓発および研究を行い、もって部落問題の解決に寄与する」(財団設立趣旨)ことに粉骨砕身、大変精力的に活動されていました。
会うたびに財団の話を熱く語っておられたことを思い出します。
朝田華美さんのお話しを聞いて、そんな彼を想い起こしながら、彼の「志」、「精神」が未来につながるように精一杯努力して参りたいと決意をいたしました。

さて、朝田教育財団は、朝田善之助委員長の生涯の闘いの結晶であります。
そして、先の目的にありますように崇高な理念を示しています。
この理念を私もしっかりと受け止め、財団の主要事業が奨学事業であることは勿論ですが、そうした奨学事業を通じて「人を育てる」こと、さらに差別のない社会に向けて教育・啓発に取り組むことに全力を傾注いたします。

また、朝田善之助記念館が開設されてちょうど1年という歴史の節目に立ち会わせていただくことができて本当に光栄なことと感じています。
記念館には、朝田善之助初代理事長が生前様々な運動を通じて収集された5万点を超える部落問題にかかわる史資料が残されています。
私も書庫と1階と2階にある開架されている図書や史資料等を拝見しました。
運動の中で明らかになっていない資料等も多数存在し、歴史的価値のある本当に素晴らしい史資料が保管されています。
現在「公開」に向けて鋭意準備中ですが、是非とも一度閲覧していただきたいと存じます。

さらに、記念館には朝田善之助さんの往年の居室がそのままに再現され、ここで部落解放について熱く語られていたであろうお姿に想いを馳せ、「朝田学校」を体感することも出来ます。
こうした朝田善之助さんの熱い「魂」を感じつつ、朝田教育財団が差別のない“真に豊かな社会” を実現するために日本の人権問題解決のリーダーシップを発揮できるよう心血を注いで参ります。

一方で、2016年12月に制定施行されました「部落差別の解消の推進に関する法律」は、「部落差別」を具体的な人権問題として取り上げその解消に向けた取り組みを明らかにしました。
そして、この法律を受けて兵庫県のたつの市をはじめとして各地で「部落差別の解消の推進に関する条例」の制定も進められています。
このように、名称の違いはあるものの我国の人権問題を解決する大きなスタートにもなりました。
しかしながら、すでに3年が経過していますが、法律の目指す社会の状況には至っていないのが現状ではないかと思っています。
当財団がそうした社会を変える一翼を担えることができればとも考えています。

とは言いましても、松井大先輩をはじめ歴代理事長の方々のように大きな実績もない私であります。
第7代目の理事長としての大役を果たすことができるかどうか、大変な恐縮とともに不安でいっぱいです。
京都市役所時代、現場の第一線で働く仲間と一緒になり、走り回っていたことだけが取り柄の私でございます。
皆さん方とともにお力添えをいただきながら、朝田教育財団がいよいよ「真の豊かな社会」、「差別のない社会」に手を繋いでいく、そんな大きな役割を果たす仲間の一人として、役割を果たしたいと存じます。

あらためて、朝田善之助初代理事長の生涯の闘いの結晶、財団創立の崇高な理念を胸に刻み、朝田善三さんが築かれた土台を、基盤を、彼の志を皆さん方にしっかりと繋ぐ、その気持ちだけは強く持ちまして、自らを叱咤激励しながら頑張って参ります。

皆さん方のお力添えを是非ともよろしくお願い申し上げまして、理事長就任のご挨拶とさせていただきます。
何卒、よろしくお願い申し上げます。

朝田教育財団 理事長 水田 雅博

略歴
みずた まさひろ
1953年12月14日生まれ。
立命館大学卒業。
1977年 京都市役所入庁。
教育委員会、総合企画局市長公室長、伏見区長、
京都市交通政策監、京都市公営企業管理者を歴任。
2016年3月退職。
現在、京都ステーションセンター株式会社 代表取締役専務
立命館スポーツフェロー 会長
立命館大学体育会ソフトテニス部 統括監
立命館大学校友会 常任幹事
近畿ソフトテニス連盟 副会長
京都市体育協会 理事 などを務める。