2025年度「朝田善之助賞」の募集は個人及び団体(グループ)から3件の交付申請が提出されました。1月16日理事会において助成対象者を以下の通り決定しました。名前、研究テーマと研究目的・概要を掲載します。
1.西村 優汰 さん
京都の被差別部落における活動家の人物研究
被差別部落に関する歴史研究は数多くみられるが、部落改善運動や水平運動、部落解放運動をはじめとする反差別運動に関わった人物研究は比較的少ない。京都の活動家の中では、上田静一や朝田善之助(田中部落)、益井茂平や南梅吉・増田ヒサエ(千本部落)、竹中庄右衛門(東三条部落)、桜田儀兵衛や伊東茂光・桜田規矩三・菱野貞次(七条部落)といった人物の研究がみられるが、それ以外にも研究すべき人物は多い。
本研究では、これまで人物研究がなされた例がほぼ無い活動家「寺田清四郎」(1880~1943)を取り上げたい。寺田は田中大正会会長、京都府水平社初代執行委員長、また養正学区会議員などを歴任しており、部落改善運動・水平運動に加えて地元の学区における活動に関わった当時としては稀有な活動家である。本研究は「人物研究」であるが、寺田のユニークな生涯・活動を通して明治末期から大正、昭和にかけての田中部落や京都の被差別部落の歴史および部落解放運動の検証を試みたい。
言うまでもなく朝田善之助と同じ時代に、同じ田中部落を拠点に活躍した活動家である。
2.北村 可門 さん
住宅地区改良法対象地区における住民主導のまちづくりの主体間関係と協働体制に関する研究―京都市崇仁地区を対象としてー
京都市崇仁地区は、京都駅至近という高いポテンシャルを有するも、被差別部落という歴史的背景から長らく差別的な待遇を受けてきた。現在、京都市立芸術大学の移転に伴い、地区は変容の渦中にあるが、この転換期において地域の将来像は依然として不透明である。その主因は住宅地区改良事業法に基づく属地属人主義的な制度運用の硬直性にあり、乱開発から地域を守ってきた反面、新規人口流入を阻害し、フードデザートやまちづくりの担い手不足等の課題を招いた。特に地区北部では、改良事業の停滞により空閑地が点在し、都市空間の余白を生んでいる。
また、まちづくりの推進体制にも課題が残る。戦後、京都市主導のクリアランス型事業は住民との対立や地域分断を招いたが、柳原銀行の保存運動を契機に崇仁まちづくり推進委員会が発足し、住民主導の体制構築が進められた。芸大移転決定前後にはエリアマネジメント部会も設置され、大学との協働が模索されてきた。しかし、既存の体制が十分に機能しているかは疑わしい。実際にエリアマネジメント活動は停滞気味であり、多様な団体の相互関係や役割分担は不透明である。地域主体のまちづくりが推進力を欠く現状は、既存の組織構造の限界を示唆している。
地域が不可逆的な変化を遂げつつある今こそ、「誰のためのまちづくりか」という根本を問い直し、持続可能な将来ビジョンと、それを支える主体のあり方を再考する必要がある。
本研究の目的は、地区の歴史的経緯と制度的制約を踏まえ、転換期におけるまちづくり主体の構造と協働体制のあり方を明らかにすることである。具体的には、地区内の主要な団体・組織の理念や活動実態について、文献調査及びヒアリングを通じて分析し、地域に与える影響や団体間の関係性、及びその来歴を体系的に整理する。その上で、多様なアクターがいかに関わり合い、新たな合意形成のプラットフォームを構築すべきか、その方策を模索する。
3.川端 宏幸 さん
自主夜間学校「いいあす京都」の社会的意義と存在意義の考察
―公立夜間中学との関係性・部落問題との関係性―
「いいあす京都」(以下、「いいあす」)は京都府部落解放センターで開校して約2年半の「自主夜間学校」だ。義務教育未修了者や、形式卒業者、不登校の人、日本語を学びたい人などが通っている。今日の教育要求のニーズは幅広いものの、校是には部落の識字学級の心を引き継いでいると自負している。
学習者の登録数は80名に迫る勢いである。学習者を支える学習ボランティアの登録数は110名を超えた。この登録学習者数の「約80」は、学習の機会と場を求めていた人数である。「いいあす」がなければ見えなかった数字であり、「いいあす」が可視化した数字ということになる。京都市には公立夜間中学(以下、公立夜中)の京都市立洛友中学校があるにもかかわらず「約80」名という“教育難民”が存在していことになる。これは氷山の一角と言えよう。このことからも「いいあす」には公立夜中とは明らかに異なる存在意義があることは明白だ。2010年に京都市から部落の識字教室は姿を消したがニーズがなくなったわけではない。そのニーズに応えていくのは「いいあす」のような自主夜間学校なのだ。
2017年施行の「教育機会確保法」以来、33各都道府県・政令市に32校公立夜中は増設されたが、公立夜中1校1校を注視すると理想通りの成果を上げていない学校も存在している。今こそ、同和教育が培ってきた理念と実践を夜間中学に注入することが重要だと考えている。いわゆる教育的弱者への支援は同和教育が確立してきた教育であり、その教育を幅広いニューズに普遍化していくことが部落問題解決につながることは言うまでもない。
本研究では京都市立洛友中学校や徳島県、鹿児島県の公立夜中を研究対象として、その実態と課題を明らかにすることで、「いいあす」のような「自主夜間学校(中学)」の社会的意義と存在意義を明らかにしていきたい。そして、「いいあす」の活動が部落問題解決の一助になっていることも明らかにしたい。
なお、助成対象者は2026年11月末までに研究成果をまとめ、研究報告書を提出していただきます。提出していただいた研究報告書を「朝田善之助賞」を2027年3月に決定し、発表いたします。「朝田善之助賞」受賞者は、2027年7月開催予定の研究報告会にて表彰いたします。
































