医療ソーシャルワーカーの新たな役割についての一考察
―医療安全対策委員会への関わりから―
このタイトルは、私の卒業論文のタイトルです。私は、医療ソーシャルワーカーとして病院で働くための要件として、社会福祉士の国家資格を取得するために大学に入学しました。その時から、卒業論文のテーマは「医療ソーシャルワーカーと医療安全について」と決めていました。しかし、なかなか執筆がはかどりません。卒論に向けた準備不足を痛感しております。ここで私の卒業論文の「はじめに」を紹介したいと思います。私の研究テーマが伝われば幸いです。
《医療事故が社会的関心として取り上げられるきっかけとなったのは、1999年1月の横浜市立大学附属病院で起こった手術時の患者取り違え事故と、同年2月に起こった東京都立広尾病院での誤点滴事故である。これら2つの医療事故により、マスメディアの医療事故に関する報道は急増し、市民の医療の安全に対する関心が高まった。これ以後、各病院は「医療安全対策委員会」等を設置し、医療安全対策業務に取り組んできた。しかしその取り組みは今だに十分な効果をもたらしていない。なぜなら、医療事故を患者との紛争であると捉える医療職側の理解が、真の原因究明を妨げているのではないかと考えられるからである。
筆者は設備・医療資材担当として病院に勤務した経験がある。その時には、病院設備の改修や、安全対策を取り入れた医療資材の導入など、ハード面で関わってきた。しかし当時から、このような安全対策にはハード面よりソフト面、いわゆるヒューマンエラーに関する対策の強化が必要であると考えていた。それは、医療安全対策委員会のメンバーが主に医療職のみで、業務の効率化を優先していたため、医療安全そのものに目を向けていなかったからである。同時に医療職同士の「伝わっているはず」というコミュニケーション不足が、事故の減らない一因ともなっていた。そこで本研究では、医療安全対策に着目し、そこに医療職以外の視点を入れることを論じてみたい。なぜならその視点を入れることは、患者や家族さらには職員の生活を守るという観点から、より安全対策の推進につながると考えたからである。具体的には医療ソーシャルワーカー(以下、MSW)が医療安全対策委員として適任であると考えている。なぜならMSWは病院に訪れる患者やその家族の生活を第一に考え、治療中や療養中の困りごとを解決することが主たる役割となっているからである。すなわち患者や家族の生活を視野に入れた、リスクマネジメントから医療安全を考えたとき、患者の代弁者として医療者に対し対等に安全対策について意見できる立場ではないかと考えるからである。
そのため本研究では、まず現在の医療安全対策の現状について検討し、医療職のみで構成される現状の「医療安全対策委員会」の限界について論じたい。その次にMSWの役割と業務を整理し、病院内での位置づけを明らかにする。そしてそのことをふまえ、実際に2名のMSWに対してインタビュー調査を行い、医療安全に関するMSWの新たな役割について分析し、医療安全に関わる意義について検討していきたい。
いかがでしょうか。少しでもテーマが伝わりましたでしょうか。医療安全の中心には患者や家族の生活があり、それを医療・福祉の両方の視点で守ることが大切ではないかと思います。医療ソーシャルワーカーはその役割をしっかりと担えると考えています。
大学 公共政策学部 福祉社会学科 4年生 S.Uさん